【短編小説】『学級崩壊』

 

  一

 僕のクラスの人たちはみんな死んだ。毎日、学校に行く度に一人ずつ死んでいった。先生は毎日「今日は○○くんが亡くなりました」と説明してから授業を始めた。そうしていまでは僕のクラスには僕しか残ってない。僕だけが先生の授業を受けられるのだ。

 

  二

 先生は大学を卒業するまで他人とまともな会話をしたことがないと言った。他人というものは自らの信念を妨害する悪だと断言した。「いいか、みんなも他人には気をつけるんだぞ」といつも言った。

 

  三

 先生はいつも僕を焼肉に連れて行ってくれた。ファミレスだった時もある。先生はたぶん僕と話をするのが好きだったんだろうし、僕も先生と話をするのは家でゲームをすることの次くらいには好きだったから、あまり断ることもなかった。それに、家に帰ってもお母さんは夕飯を作ってくれたことがなかったので、夕飯も食べられるからちょうどよかった。

 

  四

 夏休み明けを境に、先生は二度と学校に来なかった。僕のクラスは僕一人になった。ほかのクラスメイトもいないし、唯一の他人だった先生もいなくなった。僕は自分で自分に授業をすることになった。僕は全教科の偏差値が八十以上あったし、部活では甲子園優勝とサッカー国体優勝するくらいスポーツもできたので、考えてみれば先生なんか全く必要なかったことにすぐ気づいた。

 

  五

 いま僕は地元の市役所で公務員として働きながら、四コマ漫画を描いて副収入を得ている。窓口にやって来る市民どもの低脳さにはうんざりさせられるが、自宅から徒歩五分の職場で、例外を認めないタイプの決まりきった対応をするだけでいい仕事をするのは、とても楽だ。

 

  六

 両親は亡くなる時に莫大な財産を相続してくれたので、それまで心の底では嫌っていたが許せる気持ちになった。妻は毎日とても美味しい料理を作ってくれるし、あらゆる家事を楽しいと言って率先してやってくれるから好きだ。最近料理本を出版したらしく、印税も毎月かなりの金額入ってくる。妻はそのお金で服を買ったり友達と海外旅行したりしている。

 

 七

 何かが頭にコツンと当たる感覚がして見上げると教壇に先生がいた。クラスメイトたちはみんなクスクスと嘲笑している。「また居眠りか。そんなんじゃ次のテストも赤点だぞ」。後ろの席の男子が僕の背中をつついて言った。「放課後いつものゲーセン行こうぜ!」。僕は小さな声で「おう」と答えた。

 

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