陰影 三


        三

百メートル程の商店街のちょうど中間辺りに街で唯一のレンタルビデオ屋がある。店先に自転車を停めレインコートを脱いで中に入る。黒い半袖シャツの店員が暇そうに何やら棚を弄っている。レジにいる二十代後半くらいの店員がガシャッガシャッと手際よくケースのセキュリティを外している。

毎日補給される新作の映画を市販のケースからレンタル用のケースに入れ替えて、棚の目線の高さの位置に面陳で並べる。在庫記録から回転率を確認して、人気のない映画を棚から外す。一見味気ない機械的な作業をしているかの様に見えるが、店員もそれぞれの趣味を持った人間である。棚をよく眺めてみると、一般的な人気がなくとも店員の個人的な思い入れのある映画が、意外な好位置に置かれていたりする。そういうところがいい。統計的に利益効率を高めるだけの機械には思い入れが無い。偏りがなくて面白味も無い。趣向まで効率化されてしまえば、予想外な新しく面白い出会いの可能性も閉ざされる。

面陳されている新作の恋愛映画を手に取る。パッケージには「恋をすれば傷を負う。いつだって僕らは傷だらけだ」というキャッチコピーが書いてある。それをそっと棚に戻すと、その隣にゾンビ映画らしきものが棚差しされている。手に取ってみると、パッケージには「怪奇!ゾンビフィッシュの恐怖」と、赤いおどろおどろしい文字でタイトルが書かれており、水着の女性たちが大量のゾンビフィッシュに襲われて逃げ惑っている。

中のケースを抜いてレジへと持って行くと、店員は澄ました顔でその愉快な映画をスキャンし、黒いレンタル袋に入れてこちらに手渡した。