本能と制度 | ジル・ドゥルーズ

本能と呼ばれるもの、制度と呼ばれるもの、これらは本質的には、満足を得るための異なった手段を示している。あるときには有機体は、その本性に合った外部刺激に反応しながら、外部世界から、自己の傾向性や欲求を充足させるためのさまざまな要素をとり出してくる。これらの要素は、動物の種に応じて、それに特有の世界をつくりあげるのだ。また、あるときには主体は、みずからの傾向性と外界との間に、独自の世界を確立〔=制度化〕することによって、数々の人為的な充足手段をつくりあげる。これらの手段は、有機体を自然状態から解放し、別の事象にしたがわせ、傾向性そのものを、新たな環境にもたらすことによって変形してしまう。まさしく、金銭はそれを手に入れれば、飢えからの救いとなるし、結婚は、相手を探す手間をはぶき、ほかの仕事ができるようにしてくれる。つまるところ、あらゆる個体的な経験は、その経験のなされる場があらかじめ存在しているということを、アプリオリに前提しており、その場が、種に特有のものであったり、制度的なものであったりするわけである。本能と制度とは、ありうべき満足をめざして組織された二つの形態なのだと言うことができよう。p75-76

 

 

哲学の教科書---ドゥルーズ初期 (河出文庫)

哲学の教科書---ドゥルーズ初期 (河出文庫)