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よくあるご質問

重田園江『社会契約論ーーホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ』──素朴な疑問を哲学者にぶつけてみること

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著者の重田園江はミシェル・フーコー研究者で、他の著作に『ミシェル・フーコーー近代を裏から読む』や『連帯の哲学Ⅰーーフランス社会連帯主義』などがある。どの著作も文体がとてもいい感じなので下記いくつか引用する。

 

ホッブズは世界を、個人より小さい単位、あるいは単純な現象へと分解する。つまり彼は、近代がそこにとどまった個人より、ずっと根本的なところにまで世界をバラしてしまったのだ。これはとても異様なことで、なんというか、個人という単位を「脱構築してその先までいく世界観だ(私には「脱構築」という言葉の意味がよく分からないが、たぶんそんな感じだ)p4

 

人間が生きているかぎりこうした運動をつづけるとするなら、そこで自由意志とは何を指しているのだろう。それは、ある人の外面的行為から推測して、この人はこの行為に至る意志を持ったはずだと事後的にみなされる、ということでしかない。ビールを飲んだからには、それを意志したに違いないのだ。だがここで、ビールと私との間に生じる関係が引き起こす欲求(喉が渇いた、泡が出る苦い飲み物がほしい)は、自らの意志で生じるわけではない。では、運動や欲求を上から統制することができないような意志を、はたして自由な意志と呼べるのだろうか。p49

 

だいたい、社会契約なんてリアリティのなかけらもない。誰が契約したのか、したやついるなら手を挙げてみろ。これがヒュームの言い分だ。p103

 

これにつづく文章がまたふるっている。「これこそ根本的な問題であり、社会契約がそれに解決を与える」。かっこよすぎるが、ほんとかよ!?と突っ込みたくなる。p17

 

とまあ、こんな感じだ。なんというか、ホッブズやヒュームやルソーにたいしてとてもフレンドリーに接しているかのような文章である。疑問や分からないところを素直に分からないと言ってしまうところが潔い。また、比喩が卑近である。昼間からビールを飲むかどうするかの話が自由意志の自由さへの疑問となっていたりする。

 

図解もいい感じだ。まじめくさっていないのがとてもよい。適当なようでいて思いのほかわかりやすい。

 

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「ヒュームのコンヴェンションとホッブズの社会契約の異同」p115

 

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「ルソーの「6」の字の歴史」p163

 

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「ルソーの社会契約」p180

 

「一般意志」は「特殊意志」と対比される。ロールズによれば、原初状態を想定した時、そこは「無知のヴェール」で覆われているため、個々の人間の特殊性はなく、一般性にもとづいて「全員のために選択せざるをえない」。そうすればコンヴェンションの無限背進に陥ることもなく、社会的連帯が実現できる(社会契約できる)。

 

しかし、現実問題としては原初状態などない。だれもが「自分の知のヴェール」に覆われていて、「自分自身のために選択せざるをえない」。現実には「一般意志」はみあたらず「特殊意志」しかないように見える。そうするとはじめに武器を放棄した奴が絶対に不利なので、自分の権利を他者に委ねる社会契約のはじまりなんてほとんど不可能になってしまう(「コンヴェンションの無限背進」=「ホッブズ問題」)。

 

ヒュームが言うように「実際には、支配は征服によって成立し、骨肉の跡目争いや政治抗争を通じて定まってきた。その果てに現在の体制があるわけ」なら、社会契約論など机上の空論でしかないかのようだ。だが、それでは困る。それだと社会的正義つまり平等は非現実的な夢想でしかなく(実際ルソーは夢想したわけだが)、社会は不平等の邪悪なループから抜け出せないままだ。

 

info

■『社会契約論ーーホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ

著者:重田園江(おもだそのえ)

発行者:熊沢敏之

発行所:筑摩書房

装幀者:間村俊一

印刷・製本:精興社

 

■目次

はじめに

「社会契約論」とはどんな思想だろうか/国家vs.個人ーー戦後日本と社会契約論/いま社会契約論をどう読むか/市場の秩序と約束の秩序/約束から一般性へ

第1章 ホッブズ

ホッブズの生涯と著作

1 世界の運動論的把握とは

リヴァイアサンーーホッブズの社会契約論/機械論的無神論ホッブズ?/すでにある秩序を拒否すること/世界は運動と関係からできている/熟慮とは何か/既存の秩序に依拠しないことの異様さ/自由意志は自由か/自由と必然性について/ホッブズニーチェの世界観

2 政治社会の再構成とホッブズ問題

自己保存の自然権と自然状態/自然状態で人は自由か/ホッブズ問題と囚人のジレンマ/ホッブズホッブズ問題を解いたか/三つの代表的解釈/政治社会が生まれる場所

3 約束の力

一つの契約が、結合と主権者を同時に生み出すこと/権利は一斉に譲渡されるのか/信約とは何か/信約は自然状態においても守られるのか/約束の力/リヴァイアサンの力は約束の力である/ホッブズの平等の強さと深さ

第2章 ヒューム

ヒュームの生涯と著作

1 秩序の起源はどこにあるのか

「原始契約」についてーー社会契約の批判/社会契約は無効か?/契約の存在を「事実として」否定したあとに、何が残るのか

2 コンヴェンションとホッブズ問題

ヒュームにおける約束の限定/情愛の関係と約束の関係は分けられるか/コンヴェンションの導入/社会契約とコンヴェンションの異同/ヒュームとホッブズ問題/「原コンヴェンション」の想定

3 政治社会と文明社会

統治の原理的な起源は約束ではない/「だが、やっぱり約束があったかもしれない」って、どっちなんだよ⁉︎/商業社会の発展が文明化をもたらす/原理と史実の往復によって、ヒュームが秩序の危うさを消去すること/私は何のためにこの本を書いているのか。そして、ルソー

第3章 ルソー

ルソーの生涯と著作/ルソーをどう読み解くか

1 ルソーの時代診断ーー「政治経済論」

ヒュームとルソーの文明化への態度/「政治経済論」/国家の正当性への問いーールソーの「ポリティカル・エコノミー」/富と商業についてのヒュームの見解/ルソーの企図は何だったのか

2 ルソーの歴史観ーー『人間不平等起源論』

ルソーの歴史描写ーー「6」の字の歴史/社会契約ーー歴史に楔を打ち込むこと/なぜ新しくはじめられるのか

3 契約はどんなものかーー『社会契約論』

社会契約の条件ーーシンプルにして最強かつ自由/契約の条項はどんなものか/契約の一方の当事者が全体であること

4 一般性と特殊性ーー一般意志について

一般意志は特殊意志の総和ではない/この視点と全体の視点/一般性と特殊性の対比/「一般意志」の概念史/モンテスキューからルソーへ/神学の反転/一般性と多様性、あるいは政治的自由について/一般意志は過たない

第4章 ロールズ

ロールズの生涯と著作/なぜロールズを取り上げるのか

1 ロールズのヒューム批判

功利主義とヒューム/「共感」への疑問/一般的視点と思慮ある観察者/「最大多数の最大幸福」と共感のつながり/一般は特殊の延長にはないーーヒューム、ロールズ、ルソー

2 正義の二原理

ロールズの狙いは何かーー社会の基本ルールを定めること/原初状態と無知のヴェール/特殊なエゴイズムとその乗り越え/自由の保障ーー第一原理/機会均等原理ーー第二原理①/格差原理ーー第二原理②/エゴイズムの抑制がわなぜ第二原理を選択させるのか①ーー第一原理/エゴイズムの抑制が、なぜ第二原理を選択させるのか②ーー第二原理

3 ルソーとロールズにおける一般性の次元

『政治哲学講義』における各思想家の評価/利己心と相互の尊重ーーロールズはルソーをどう読むか①/文明化と社会契約ーーロールズはルソーをどう読むか②/一般意志はなぜ過たないかーーロールズはルソーをどう読むか③/一般性の次元

おわりに 社会契約論のアクチュアリティ

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謝辞