やっつけ仕事の職人/『カント哲学』ジャン・ラクロワ

概念の職人

カントほど概念という道具の利用に長けた哲学者はなかなかいない。感性、悟性、理性、現象と物自体、ア・プリオリとア・ポステリオリ、超越論的、定言命法ーーカントはまるでパン職人がパンをこねるように熟練の手つきで概念を操作する。                                            

自分なりのやり方

カントは自分のルールを作り、それをもとに哲学体系を構築した。それが哲学の方法だというわけだ。それはつまり、唯一の真実という正解があるわけではなく、各々のルールの説得力や有効性がものをいうという考え方である。

開き直る

ヒュームが破壊した形而上学は、カントによって修復された。どうやって作るかは解明できなくても、とにかくパン職人はおいしいパンを作る。そして、私たちはそれをおいしく食べる。いつまでも小麦の存在を疑っていたところで、おいしいパンを作ることはできない。ヒュームは実際には形而上学を破壊したのではなく、形而上学の信用性の低さに躓いたのである。カントは実際には形而上学を修復したのではなく、形而上学が信用できないことを受け入れるが、だからと言って価値がないわけではない、と開き直る。その開き直り方が、尋常ではない。

やっつけ仕事

「君の意志の格率が、いつでも同時に普遍的立法の原理として妥当するように行為せよ」という定言命法ひとつとってみても、よくこれほど適当な思いつきを公言できたものだと誰もが尊敬の念を抱く。カントは「こまかいことはいいからとにかくやれ」と言う。ようするにやっつけ仕事である。

 

カント哲学 (文庫クセジュ (499))

カント哲学 (文庫クセジュ (499))