【エッセイ】詩を構成する要素

基調となる感覚 類似/対立 概念 時空間 指定あり/なし 精神/物質 連関 誰の視点か(単体/複数) 比喩 定型のパターンがある ∟隠喩 擬人化 例)空が泣いている ∟直喩 のように 例)涙が雨のように流れる 韻を踏む 語順

【詩】まなざし

あの時のわたしのまなざしあなたへと向けて送られたそれはいまどこにあるの ただ放たれたままどこへもたどりつかず異国の地を吹く風となって人知れず地球を彷徨うあの時のわたしのまなざし どこまでも行けわたしの知らないところまで

【エッセイ】どのような詩を作るべきか

何回でも読めて 人生の傍に置いておくことのできる 詩 一回読んで楽しかったという小説ではだめだ。 一回見て楽しかったという映画もだめ。 どんなに短くても なんとなく傍に置いておきたくなるような詩を 作るべき。

男は歳を取ったら

男は歳を取ったら、女の話と、お笑いの話と、政治の話と、仕事の話はなるべくしない方がいい。キモいから。 じゃあ何を話すの???

【エッセイ】ひと目見るだけではそのよさがわからない表現の形式としての小説

芸術の中でも、絵はひと目見ればそのよさがわかる。もちろんよく見ればもっとわかる。 視覚的な表現は、そのよさを見る人にわからせるためのハードルが低い。 たいして、小説などの文章表現は、ひと目見ただけではただのなんらかの記号の集合でしかない。ひ…

【エッセイ】創作もまた特定の機能を持った商品としてみなされる

特定の機能を持ったただの商品としてみなされるのは、 ものの売り買いをするビジネスにおいてだけではない。 ほんらい精神を表す創作においても、同様である。 たとえば、村上春樹は村上春樹的な機能を持った商品としてみなされている。 表現すること自体は…

【エッセイ】物質として取り扱われる人間存在

精神は軽視され、精神は衰退している。 いまや人びとは代替可能な 身体=機能=道具=資本=人材=材料 とみなされる。 金=利益 あるいは 快楽を 効果として発生させるための道具=商品 としてふるまうことを強制される。 代替可能であること によって 存在…

【エッセイ】生涯と創作の表出について

詩人のジャコモ・レオパルディは38歳でこの世を去った。 作家の夏目漱石は49歳でこの世を去った。 哲学者のスピノザは44歳でこの世を去った。 人間に対する深い洞察を書いたこれらの人々は意外と早世である。 (もちろん長寿もいる。ゲーテは82歳、…

【エッセイ】ヴァレリーの『カイエ』

ヴァレリーは早朝まだ暗いうちから起き、朝にかけて日記のような思考を書きつけた。 それが後世あらゆる他の作家に引用されることとなる『カイエ』である。 モンテーニュやパスカルにもそのようなテクストがある。いわゆる『エセー』や『パンセ』である。 そ…

【小説】湖の現在

夜明け前に小屋を出発し、湖へと向かって散歩するのが好きだった。 まだ暗い森の中を歩く。 周囲にあるのは木々が風に揺れる音だけ。 道は暗くて見えないが、もう何度も通った道だから見えなくてもなんの問題もない。 湖へと辿り着く頃には朝になっている。 …

【エッセイ】無名の作家が必ず思うこと

文章を書いてSNSなどにアップしても(とくに知人から)なんの反応もない。逆に親しい人ほど完全に無視だ。お前の書くものなど読む価値もないという無言のメッセージ。 彼らはそもそもプロの作家が書いたものさえ読まないのだから私の書いたものなどさらに読ま…

【小説】『雪解け』

一 ナオミが眠りから覚めてベッドのそばにある窓から外の景色を見るとそこには雪が降っていた。綺麗な埃のような、生命を宿した塵のような雪の結晶が、音もなく空から大地へと降り注いでいる。 真っ白な点が無数に散らばってビルや道路の境界は淡く溶け合い…

【小説】『ストレンジ・ゲート』

一 二〇代の輝かしいビジネス的成功を瞬く間に喪失して家も妻も失ったサイモン・ベネットは郊外の実家に戻り、初老になる父が店じまいをする予定だった地下鉄の駅近くにある小さなグロサリーの跡を継いだ。‬‪ 日々のつつましやかな生活をぎりぎり継続させる…

【小説】『いつもの』

一 田中雄一が20年間欠かさず続けている週に一度の楽しみは、仕事帰りに行きつけのバーでウォッカを飲むことだった。 その日もいつもと変わらない仕事を終え、ちょうどよく疲れた身体を夜風に揺られながらバーに入り、いつも座る店の奥の端っこの席に座り…

【小説】『転職』

山下里生は大学を卒業してから三年ほど働いた仕事を辞め、家に引きこもるようになってもう半年が過ぎた。 転職サイトに登録して30社ほど面接や試験を受けてはみたものの、世の中の不況の影響もあり、里生の働きたいと思うような条件を満たす会社にはどこに…

【小説】『扉』

内歩市のとあるバーにはいつもすり減った男たちがそれぞれ一人で酒を飲んでいる。 薄暗い店内の中央にはビリヤード台があり、壁際にはピンボール台があるが、誰も使っていない。 男たちはただ黙って座っていて、時折ひとことふたこと言葉を交わすだけだ。 荒…

【小説】『神』

彼は小さなアクリルケースの中に一匹の虫を飼っていた。何もないアクリルケースの中をあてどなく彷徨うその虫を見て、彼は自分がまるで一つの生命の運命を支配する全能の神になったかのように感じるのであった。ある時、彼はその虫を人差し指で潰して殺して…

【小説】『島』

一 島の半径は一キロメートルにも満たない。この島に漂着してから一ヶ月が過ぎ、どこに何があるのかはだいたいわかった。一ヶ月前私はハワイ島から離島に向かうツアーに参加した。甲板で透き通る美しい海を眺めていると、突然天候が変わり、激しい嵐に呑まれ…

【小説】『呪文』

タカハシくんはノートの端にいつもなにやら見たこともないような文字を書いていた。それから数学の授業でも見たこともないなんらかの図形も。 放課後の帰り道で僕がタカハシくんにいつもタカハシくんはなにを書いているのと聞くとタカハシくんは言った。 「…

【エッセイ】夜

夜は暗く、深い。心の奥底の 不安や、欲望が意識の上にあ らわれてくる。抽象的な亡霊 が部屋の中を浮遊する。生き ることの意味…問いかけるこ と自体に意味があり、何の答 えもない「?」。いま、どこ にいるのだろう、この、何か は。そして、次の瞬間には…

【小説】『湖』

湖までの距離はあと1kmくらいか。朝5時に山小屋を出てから50分ほど歩いてきた。特に目的もなく湖に行くと決めたのはひどい咳で深夜3時に目が覚めてしまったからだ。とにかく何か新しい静謐な感覚が必要だと感じられた。過去を大きく見積っていたのだと思っ…

【エッセイ】ある本について語ることについて

素敵な本について書かれた説明文は、説明文という形式のために素敵な本の素晴らしさを伝えることに成功しない。 構造や背景を分析することでその本の素敵さが伝わるわけではない。それよりもむしろ、素敵な本のフォロワーとして、「ささやかな挿話」を捧げる…

【エッセイ】書くべきことについて

書くべきことがなくて書け ない、と思う時がある。と いうより、いつもそんな感 じがする。白紙を前にぼん やりして時間が過ぎる。そ して、結局何も書かないま まになる。 しかし実際は、書くべきこ とというのは、何でもいい からとにかく書いている途 中…

【要約】『無人島 1953-1968 6 カフカ、セリーヌ、ポンジュの先駆者、ジャン=ジャック・ルソー』ジル・ドゥルーズ

邪悪さの優位 邪悪さは人間社会によって発生するもので、善良さと邪悪さという区別は、ア・プリオリに存在する真実ではなく、人間社会によってア・ポステリオリに作られた虚構の産物だと言う。 ルソーは、邪悪さは人間社会のなかでも、とくに抑圧的な利害関…