個性に自己批判は欠かせない/『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』ティム・バートン

ティム・バートンは、よく作り込む。『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』も細部までよく作り込まれている。作家の個性を持った手作りの作品という言葉がしっくりくる。

井戸田潤はハンバーグ師匠というキャラクターを作り込んだが、ティム・バートンもなかなか負けてはいない。ハンバーグ師匠ほどの個性はないが、ティム・バートンもわるくない。よく作り込まれているほうだ。

ティム・バートンは個性そのものをテーマにする。言い換えれば、人と違うことをテーマにする。他人を傷付ける危うさを持った個性を優しく受け入れようとする。そしてそれがファンに人気のポイントである。

ハンバーグ師匠もまた人と違っているが、ハンバーグ師匠がティム・バートンより優れているのは、個性をメタ的な視点からユーモアとして批判的にみる視点を持つところである。

ティム・バートンの、人と違うことを表現しようとする執念深さは、ほとんど病的である。映画も長いし、ひたすらおなじことのヴァリエーション違いの繰り返しである。 

観客に感動をもたらすまでには至らない微妙なバランス感覚は、作品にたいする職人的気質のたまものではあるが、作品の見方に関する注意書きに不足しているため、「個性的」な人たちが陥りがちな批判的視点の欠如に気づかない。

人と違うことや個性について、いったん深く考え直さないかぎり、ティム・バートンという作家は、たんに幻想的なファンタジー作家というありきたりな没個性の作家で終わってしまうだろう。

ハンバーグ師匠は、ハンバーグに関する微妙なギャグを言った後に、いったん間をおいて「ハンバーグ!」と言う。周知の通り、それこそが重要なのだ。ティム・バートンには、いったん間をおくことも、「ハンバーグ!」と言うことも欠けている。

 

 

ティム・バートン[映画作家が自身を語る]

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